Naruki.K's Radio Head

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無料公開講座に参加 その4 無意識の行為を利用したデザイン思考

「学都石川の才知」と題された、無料で参加できる公開講座
それらのうち、6月から7月にかけて開講された4つの講座を
ちょっとした興味の赴くまま、アポなし飛び入りで受講したという話。

県内の大学・短大・高専の教授による、いろいろな分野の教室が
5月から8月にかけての毎週土曜日午後に一日あたり2講座ずつ、
しいのき迎賓館3階セミナールームで開講していました。

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今回は受講した講座からよっつめ。これで最後です。

 16.無意識の行為を利用したデザイン思考

について、講義で汲み取れた内容と、思ったこと感じたことを紹介します。

この無料公開講座の中でいちばん異彩を放っている(ように見えた)講座。
無意識の行為をデザインに応用?それ一体どういうことやの?と...

「これをこういうふうにしたい!」「これができるようにしたい!」と
いうふうに、明確な意図や目的をデザインに反映するという話は、
まあ、そりゃそうだよね、と、すぐに合点がいきます。

例えば、折りたたみテーブル。
気軽にちょっとしたモノを置きたい、しかも持ち運びたい。
だから、脚をどうやってたたむようにしようか、そういう脚にしても
当然ながら天板は平らに安定して使えるように、そうでありながらも
なおかつ、たたんだときには片付けやすく運びやすくするために、
天板を2つに折ってたためるようにしたらどうだろうか...だとか。
こういうのは、明確な意図や目的があった上でのデザイン(設計)と
言うことができるでしょう。想像がしやすいです。

一方、無意識の行為をデザインに落とし込むとは???
そういう行為にフィットする色彩や形状を持っている製品や建物・環境。
それこそ日用品や、スマホやパソコンのアプリでもなんでもいいのですが、
そうしてつくられたものって、とても使い心地が良さそうな気がします。
居心地が良さそうな気がします。
それこそ身の周りのあらゆるものがそうだとこりゃ極楽!と...あれ?(汗)

だけども、じゃあどうやって、デザインすることへ「無意識の行為」、
いわば「気がついたら思わずしてしまっていること」を取り込むのか?
そもそも無意識の行為にどのように意識的になるのか?気がつくのか?

 え?無意識を意識する???

考えるほどに不思議な気分が膨らむ一方...そんな好奇心で受講してみました。

【16.無意識の行為を利用したデザイン思考】

ここは講座の紹介文をそのまま引用しましょう。

 人の行為の97%は無意識に行われていると言われています。
 その無意識を意識化することで人の行為に寄り添う
 デザインアイデアを発想することができるようになります。

無意識の行為は97%もあるのだそうですよ...
であるならば、むしろ、発想やデザイン、ものづくり。
それによってできる「道具」は、如何に無意識の行為を取り込むか。
それをうまく取り込めた道具こそ、ほんとうの意味で「使える」道具に
なるのではないか。そんなふうに思えてきます。
ユニバーサルデザイン、人間工学、UX(ユーザーエクスペリエンス)...
そこへアプローチする方法というか着眼点のひとつなのでしょう。

そんなことを、金沢美術工芸大学デザイン科の河崎教授が紹介すると
いう講義でした。

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レーザー・アイ(対象物を正確に観察する)

講座がはじまるやいなや、受講者の似顔絵を描くワークに入りました。
いきなり!?絵心ないのに!だいじょうぶなのか!?

ここではワタクシはたまたまペアになる受講者がおりませんでしたので
講座の運営担当の女性(講師ではない)の似顔絵を描きました。
手持ちのペンだけでシンプルに輪郭や目鼻立ちの形をなぞっていきます。

似顔絵を描くにはひとつ注意点がありました。

 紙やペン先、自分の手元には目線を持っていかない。
 相手の顔から極力目を離さないで描く。

描く対象物から目を離さないで描いていくというのはとても不安でしたが
そのほうがむしろ正確に特徴を捉えられるという講師からの言葉どおり、
意外とよく描けました。確かに、自分の目線が対象物と紙や手元の往復を
していたらこのようには描けないだろうなあという思いがしました。

このワークには、見ているものの特徴をできるだけ正確につかむ感覚を
体験する狙いがあるようです。
たったこれだけでしたが、興味深い感覚を覚えました。

アクティブメモリーを使った商品事例

「アクティブメモリー」とは、7つの無意識の行為(後述)を
デザインに落とし込む過程で出てきた言葉だそうです。

この言葉の意味を正確に汲み取るにはまず「アフォーダンス」という
概念を前提として理解する必要があるようですが、そこはさておき、
とりあえず「このような感じ」とざっくりと例えるとしたら、
熟練の職人が持てる技を無意識に繰り出す感覚、というものが
近いものとしてイメージしやすいのではないかと思われます。

 プロスポーツ選手のプレイ
 俳優、音楽家、舞踏家などのパフォーマンス などなど...

彼らは、それらを為すにあたって無意識に身体が動くようになるために
普段から意識的に身体を動かす練習なり訓練に励みますが、
その、無意識に技が出る、いわば「手が、身体が、覚えている感覚」
アクティブメモリーに相当するということです。

それと同じような感覚を持ち込んで「無意識の行動に意識を向けて」
デザインや機能へ落とし込んで造られたモノが、アクティブメモリー
使った商品というわけです。
講義ではその実例がスライドでたくさん紹介されました。

ちなみに「アフォーダンス」とは…???

アフォーダンスの概念には、数年前にこれらの本を読みかじったことで
触れたことがありました。講義で「アフォーダンス」の話が出てきた途端、
当時とても興味深く感じたことを思い出しました。

エコロジカル・マインド―知性と環境をつなぐ心理学 (NHKブックス)

エコロジカル・マインド―知性と環境をつなぐ心理学 (NHKブックス)

 

アメリカの知覚心理学者である ジェームズ・J・ギブソン が提唱した
生態心理学の概念で、一言でいうと「環境が動物に対して提供する意味」
と説明されます。

もうすこし噛み砕くと...こういう考えかたです。

 モノ自体が、相手(モノを使う動物)に、
 モノへの動作や操作をさせる「価値」を与えている
 動作や操作をさせる環境や条件を提供している

身の周りにある道具や環境は、その道具や環境を使うひとや動物たちに
適切な行動を無意識にさせる要素を持っていて、その行動を促している
という切り口でモノを見る、という話です。

例えば、折りたたみテーブル。
広げた天板にちょっとしたモノを置く、たたんで持ち運ぶ、そういう
「行動をひとにさせる」「させる要素を備えている」というわけです。

さらには、わたしたちが身の周りになにげなく置いた道具など...
それこそ例えば、かばん、スマホ、ノート、ペン、りんご、パイナップル、
というものなども、それらを何気なく置いた「位置」や、置かれたもの
同士の「位置関係」それ自体にも、ひとや動物たちになんらかの行動を促す
「意味」「価値」を与えている、という見かたも含まれるのだそうです。

 ところで、りんごやパイナップルには
 ペンを刺すという行動をひとにさせる要素を持っていて
 その行動を促している!という...あれ(汗)

いや~、おもしろいことを思い出しましたPPAPのことをじゃないですよ!)
あらためて、モノを見たり選んだりする行為にも影響を及ぼしそうです。

7つの無意識の行為(Thoughtless Acts)

「7つの無意識の行動」の中身が紹介されました。
なかなかおもしろいので、そのまま引用しましょう。
これらが「無意識の行為を利用したデザイン思考」の基本でしょうか。

  1. Reacting(無意識に反応する
    私たちはその場の空間やものに応じて対応する。
     例:暑い日は日陰を歩く
  2. Responding(応答する。無意識のうちにしていること)
    自然やモノの特質に出会うと自然と行う行動。
     例:砂に絵を描く。
  3. Co-opting(一時的に取り込む)
    私たちはその場の環境に応じてその場のモノを利用します。
     例:チケットをしおりとして使う
  4. Exploiting(素材を意識して活用する)
    私たちは既に知っている物質やメカニズムの特質を利用します。
     例:みかん入れのネットに石けんを入れて使う。
  5. Adapting(適合/適応させる)
    私たちは自分の都合に合わせてモノの本来の使われ方を変えて
    使います。
     例:ジュースを凍らせて保冷剤代わりに使う。
  6. Conforming(他人の行動の真似をする、他人に合わせる)
    私たちは他人の行動パターンを無意識に真似ています。
     例:水たまりに捨てられたタバコを見て、
       思わず自分も捨ててしまう。
  7. Signaling(合図)
    私たちはメッセージや注意を自分と他人に伝えます。
     例:結婚指輪を薬指にする。

上記では例のところもまるまる引用しましたが、それぞれに、
身の周りのものがあてはまりそうな感じはしないでしょうか?
こういうことがわかっているだけでも、モノの見る目や発想が
一気に広がっていきそうです。

広がりそうなんですけども...それを商品や製品の全体や一部へ
つなげるとなると?というところが、そう簡単にはいかないのが
デザインや設計の奥深さなのですね。
講義で実際に例を出そうとして、あっという間に行き詰まりました...。

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しいのき迎賓館のスロープ沿いのフェンスには
コップのフチ子に器械体操まがいのポーズをさせる意味を提供......
これはResponding(2)であり、Co-opting(3)であり、
はたまたAdapting(5)でもあるのか!(汗汗汗)

   *    *    *    *    *

こんな、モノの見かたや扱う意識を変えそうなほどの影響を及ぼす、
文字通り目からウロコが落ちて新たな視界が開けそうなほどの
知的興奮が味わえる講義が

 なんと受講者ワタクシ1人だけ!

だから、講義の冒頭で似顔絵を描いた相手が「運営担当の女性」
だったわけなのですよ...

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この日2本目の講座だったということも一因なのかもしれません。
1本目の時間割であったら、1人だけということもなかったのかなと。

もしかして、受講者ゼロで中止になった講座もあったのではないかと
実にイヤな想像をしてしまいます。

なんだかもったいないし、残念ですね。
こういう、新たなものごと、専門的なものごとに
気軽に無料で触れられる機会があるけれど、殆ど活かせてない実情。

 し~けんもな~んにもない! のに...

 

このような無料公開講座とその教室が、県民に広く認知されて
足を運んで親しまれる「価値」「環境」をもっと提供されますように。

そして、この記事は、そんな「価値」「動機づけ」を提供するのに
一役買うことができるだろうか......。