Naruki.K's Radio Head

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「この世界の片隅に」を観て

もう十何年も、映画館へ行くという習慣が途絶えて久しかったけれども
この作品は映画館へ行って観てきました。
この映画の存在を知ったのは確か昨年秋頃だったと思いますが、
どなたかの告知を目にした瞬間に、これこそ敢えて映画館のスクリーンと
音響設備で体感しなければと直感しました。
今後テレビでの放送があるかはわかりませんが、あったとしても、です。

金沢・香林坊のミニシアター「シネモンド」で見てきました。
昨年のクリスマスイブに、字幕なしで一度。
その後、今年の1月中旬に同じ場所でもう一度、字幕付きのものを。

観たあとはいろいろと感じたところ、思ったところがありましたが、
なんやかやグダグダとここに至るまでまとまりきらず(先送りにしてしまって)...

今日は「こういう日」ですので、やはり「そういうこと」に思いを馳せて
今年の3月に広島へ旅行へ行って平和記念公園まわりを訪れたことも
思い出しつつ一日を過ごしましたが、この映画のことも思い起こしてみます。

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おそらく映画を観られた多くの方が思うところとおおよそ同様でしょうが、

 戦時中の社会的状況下にいる「市井のひとびと」の
 いつもの日常生活、そこから生じるものごとできごと、
 ひとびとの感情の流れとそれらが絡み合う光景

そういうものを描いた物語だと思います。
いや、物語という言葉から漂う「空想」めいたものでは決してなくて、
アニメによって再現したドキュメンタリーと捉えるほうがしっくりきます。

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市井のひとびとに焦点を当てて描かれた作品という意味では、
 中沢啓治さんの「はだしのゲン
 手塚治虫さんのいくつかの短編漫画(タイトルは失念)
過去に目にしたことがあった、そういう作品が思い起こされました。

その意味では共通していると感じましたが、
これらの作品から必ず漂うように自分には感じられるところの
「悲壮感・絶望感」「破壊された風景や人間性」という、
厳しく重たい描写は、この映画からはほとんど感じられませんでした。

だから悪いというのではありません。
戦争の事実を、戦争を体験してない自分たちや、自分たちの親くらいの
上の世代、もっと若い世代にも、これから語り継がれて知られていく
視点や感覚のひとつとして、むしろあって然るべきだと思いました。

戦時中だからといって、四六時中張り詰めた気分でいるかというと、
あるいは恐怖におののく一方であったかというと、はたまた気高い精神を
保っていた人たちばかりであったかというと、そういうわけでは全然ない。
かといって、どのような経緯であれ、戦争の動きに結果的に手を貸さざるを
得なかった人たちが愚かであったというわけでもない。
爆撃が降り落ちてくるその直前まで、そこにはずっと、今の自分たちと
同じ日常や生活、ものごとや気持ちの流れがあるということ。

あの時代が特別だったわけでは決してない。
いつの時代も、今も、人々は、自分だって、片隅でささやかに生きている。
その片隅がたくさんたくさん寄り集まって、この世界が在る。

そして、あの時代にだけ特別に、その「片隅」を脅かす「何か」が
あったわけではない。
その「何か」はその後も、今も、在り続けている。

ここまでは同じ。

ところが、「片隅」をぶち壊し得る「何か」のスピードとパワー
~破壊力と煽動力~は、指数関数的に巨大化し続けていく。
そこは、時代を経るに連れて変わっていっているところ。

槍や刀でたたかっていた時代は、人の力と頭脳のたたかいでした。 しかし、核ミサイルはスイッチひとつ。 人が関わる部分が少なくなればなるほど罪の意識は薄くなり、 頭脳の働きまで軽くなります。 しかし、一つひとつの命はかけがえがなく、何よりも重いのです。

むのたけじ『戦争絶滅へ、人間復活へ』『100歳のジャーナリストからきみへ』 - Naruki.K's Radio Head

 

いつもの身近な「片隅」。それを脅かそうとする、漠然とした「何か」。
両方がかつてあった、ということではなくて、今も在る。その両方が。
その現実をきちんと見つめて「片隅」を生き続けていく。
どちらかだけしか見えてないということではダメなのだろう。 

あやまちを未来にくり返さないためには、 起きてしまった過去の事実を明らかにして学ぶしかありません。

むのたけじ『戦争絶滅へ、人間復活へ』『100歳のジャーナリストからきみへ』 - Naruki.K's Radio Head

 

そんな視点を、とても柔らかく、暖かく、優しく、自分たちに示してくれて、
持たせてくれる。そのきっかけを与えてくれる。

そういう作品ではないかと、いまの時点では思います。

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主題歌。コトリンゴさんによる「悲しくてやりきれない」。


コトリンゴ 「悲しくてやりきれない」