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2017/07/23 チェンバロ講座 第3回

2017/07/23 チェンバロ講座 第3回

石川県の文化振興基金の助成を受けて開催されている「チェンバロ講座」。
第3回の開催に参加してきました。

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同じ鍵盤楽器でも、ピアノほどしょっちゅうお目にかかれない
チェンバロ」という楽器の、あの独特のとても繊細な響きや感触に
非常に身近に接することができること、
クラシック音楽、中でも特にバロック時代の音楽についての興味深いお話が
全く堅苦しくないリラックスした雰囲気の中で聴くことができて、
とても楽しく見聞を深めることができること、
それを、そんなに気軽に身近に接するには恐れ多いほどの
凄い実績と実力を持っておられる、それこそ第一人者の音楽家の
講座として非常に安価に受けられることで、
自称無類の音楽ヲタ好きとしては非常に貴重な機会。

ちょうど1年前にはじまった第1回と、半年前の第2回。
特に第2回は「講座」というよりも「高座」と言ったほうが実態に近い
ような、内容はとてもアカデミックで深い、話しぶりはとてもソフトで
親しみやすい、笑いもちょいちょいありな、とても和やかな場だったのが
印象的でした。
さらに、話の流れに沿ってとても瑞々しくて活き活きとしたチェンバロ
演奏。非常に高名なチェンバロ奏者「中野振一郎さん」によるそんな楽しい
高座講座が、この第3回でもまた楽しむことができるとあらば、これは
やはり聴きたいと。

この日は完全オフにしようとしていましたが、これは行く!と決めました。

第3回の話題は「組曲の歴史」。
大好きなバッハの「組曲」は、舞曲、つまり踊るための曲の詰め合わせに
なっているけれども、なんでこうも大抵の曲が踊れない感じなのか、
いったいこれはどういうことやの?という、ずっと気になっていたところ、
そんな辺りのちょっとした疑問というか好奇心に触れるあたりの話題でも
あろうことも、参加を決めた大きな動機でありました。

当日、大雨がざんざん降る中を石川県立音楽堂へ向かって進んでいき、
地下の交流ホールへ到着して座席に着いたのは開演2分前でした。
道路事情がよろしくありませんでしたがなんとか間に合いました。
幸いにも今回は鍵盤を演奏しているの手元の動きが少し見られる、
演奏者の斜め後ろあたりの前方の席に落ち着くことができました。

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開演時刻がきて、中野さんが登場。
雨男なので今日はきっと調子もよくて口も滑らかに...と言いつつ、
はじまりました。

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今回の演奏は終始ソフトなタッチでゆったりと。
外の大雨を忘れてしまうような、柔らかくて優しい、軽やかな演奏。

前回はもっと強いタッチやダークな響きも少なくありませんでしたが、
前回のテーマは「チェンバロという楽器の特徴や可能性」だったのに対して
今回のテーマは「組曲やそれを構成する舞曲の移り変わり」だったという
その内容の違いが大きいのでしょう。

トークも物腰柔らかく、とても人間くさい親しみやすさと笑いを
関西訛りで。中野さんならではのおもしろみをまた肌で感じることが
できました。
話術も、話の内容と曲の流れの選びかたや組み合わせかたというところ
までも、とても勉強になる感じがします。

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今回の曲の中で特に耳を惹いたのは、イギリスの作曲家・パーセル
クーラント。ジャズのスウィング感がほのかに感じられるほどの
躍動感が非常に印象的でした。
ジャズにアレンジするのも似合いそうなおもしろい曲のように思えます。

休憩の間には、チェンバロのオーナー「輪島さん」が調律を。
これもすっかりお馴染みの光景。

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【講座のお話・おさらい】

  組曲はもともとダンスのための曲「舞曲」の寄せ集め。

  組曲の基本形
   「アルマンド」(ドイツ風)優雅でゆったりした曲
   「クーラント」(フランス風)活発で快活な曲
   「サラバンド」(スペイン・ポルトガル風)立派な、荘厳な雰囲気の曲
   「ジーグ」(イギリス・アイルランド風)速く軽やかに弾むような曲
  この順序で「緩-急-緩-急」という流れができる。

  例えば「アルマンド」のルーツは、ルネサンス時代(16世紀頃)の
  「テデースカ」。このあたりではほんとうに踊れそうな弾む曲が多かった。
  バッハの時代には既に「聴くため」の観賞用の音楽と化してしまって、
  舞曲の名前は残ってはいるものの、実際には踊ることはなかった。

  組曲の規模も、時代が進むにつれて徐々に大きくなってきて、
  基本形の先頭に「プレリュード(前奏曲)」、サラバンドとジーグの間に
  「ギャラントリー」と呼ばれる、「ガボット」「メヌエット」などの
  舞曲を
入れるようになった。

     *    *    *    *    *    *

  17世紀頃は基本形も厳密ではなく、組曲の中の舞曲の順序もバラバラ。
  調性も、長調短調の明確な区別(曲の表情に応じた調性の使い分け)は
  はっきりとはしていなかった。
  組曲のなかの舞曲で実際に踊っていた。早くて軽快で華やかな曲調。
  曲の長さは短くて、演奏のときには延々と繰り返されたと思われる。

  18世紀頃になると、聴くための音楽として、形式も調性の使いかたも
  きっちりと守られるようになった。

     *    *    *    *    *    *

  バッハの組曲では「フランス組曲」「イギリス組曲」が有名だけども
  組曲の形式としては未完成。
  特にフランス組曲は、公には出版されなかった、バッハの家庭内の
  ための
作品集だったこともあってか、形式にも厳密さはない。

  バッハの組曲の完成系は「パルティータ」。
  組曲は古臭いスタイルということになって、巷の興味がソナタ形式
  向かって行った時代にあって、バッハは組曲にこだわった。
  そんな時代背景の中、あまりにもスケールが大きくて名曲過ぎる
  「パルティータ」は、当時は全く売れなかった。

     *    *    *    *    *    *

  組曲の基本形の舞曲はそれぞれ崩れて(踊れなくなって)いったが、
  後世にも長く残った舞曲の形式もある。
   メヌエットガボットポロネーズなど
   メヌエットから後にワルツが派生

  ※後半の出だしに、プログラムには書かれてない曲が登場。
   バッハ家の音楽帳より「ポロネーズ」「メヌエット
   ポロネーズは作者不詳、メヌエットは実際にはバッハの作曲ではない。
   「ペツォールト」という、バッハ家の近所に住む演奏家の作曲である
   ことが後世にわかった。

    実はペツォールト作曲だった、バッハのト長調メヌエットと言われていた曲。
    これ、そうだったの!?となるでしょう...

    
    バッハ(ペツォールト) : メヌエット ト長調 渡邊智子(ピアノ)

     *    *    *    *    *    *

  18世紀フランス(ルイ16世マリー・アントワネットの時代)では
  組曲を構成する舞曲に「タイトル」がつくようになった。
   「刈り入れする人」「羽虫」
   作曲家が実際にお百姓さんに接して、その様子を描写して作曲したと
   いうわけではなく、宮廷内で「お百姓さんのイメージはこんな感じ」と
   なんとなくイメージされて作られた、創造の産物。

  この時代になると舞曲(ダンス)の形式がどんどん崩れてくる。
  装飾音が多くなり、テンポも遅くなっていった。
  作曲家が自分だけに通用するような指示や記号を楽譜にどんどん
  書き込むようにもなって、ますます踊れなくなっていった。
  フランス革命が迫るにつれて、曲はどんどん甘美になっていった。
 

約1時間40分ほどの本編が終わったところでフリーの質問コーナーへ。

バッハは当時としては時代遅れなスタイルを頑固に通したということだけど
これからのスタイルとして叫ばれていた「ソナタ」も、バッハの作品の中には
あるというのはどういうわけなのだろう、ということを質問してみました。

バッハはいろんな楽器の演奏にも長けていたけども、
特にオルガンやチェンバロという鍵盤楽器の腕がものすごかった。
ヴァイオリンやフルートなどの楽器のための曲にはソナタがあるが、
鍵盤楽器のための曲として作られたものにはソナタがない。
バッハが自身の音楽を完成させる領域はあくまでも組曲だと考えていたの
ではないか、というお答えをいただきました。

そう言われてみればそうです...鍵盤楽器向けのソナタ、確かに見当たらない。
とても勉強になりました。おもしろいものですね。

 

すると中野さん...
 「前回もお越しいただきましてありがとうございます」
 「憶えてくださってましたか!?]
 「半年前にもおいでたのを憶えてまして。オーラが出てますもので
 「いやいや演奏もトークも楽しかったもので。きっと次回も!」

びっくりしましたよ!さすがに!
顔を見たら確かあいつ前回もいたわと思い出したというところでしょうけども、
なんにしても自分を憶えてくださっていました。
ただの音楽聴くのが好きなだけの一般庶民がこんなに高名な音楽家の記憶に
留まっていたというのが...恐縮だけども光栄の至り。

いやもう、とにかく負のオーラが見えていたわけではないことを祈ります...

 

最後にはチェンバロを実際に弾いてみることができます。
鍵盤がてんで弾けないワタクシはちょっと触るだけでしたけども…
それでも、第1回のときにも感じた、ピアノのタッチとの違いを改めて
感じました。ピアノよりもタッチがとても軽くてやや浅め。まるで別物。

他のお客さんが弾いているところを、本体の中を覗き込んでみました。
鍵盤に連動して、細くて小さな爪が弦をぷちんとはじく、音を出す原理の
ところをはじめて見ました。
これはおもしろかったですね。ピアノとの違いをひしひしと感じます。

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チェンバロの魅力、音楽家の博識とユーモアまでもが安価に楽しめる。
こんなかたちで音楽に親しみをもつのもとてもいいものです。
コンサートとしてもイベントとしてもどうも地味な存在ですけど、
掘り出しものです。ずっと継続されていってほしいものです。

別の楽器についても、こういうイベントがあるといいなあと...
自分が知らないだけで案外あるのかも知れないのですが。

 

こちらは前回。中野さんの演奏とお話にはじめて触れました。
もうすっかり中野さんのファンです。

rcs4naruki.hatenablog.com

こちらは第1回。演奏とお話は小林道夫さん。
83歳のご高齢にも関わらず3時間あまりの講座をこなされました。
ここではピアノも用意されていて、小林さんは両方を実演。
楽器の違いがとてもよくわかりました。

rcs4naruki.hatenablog.com

 

若かりし頃の中野さんの演奏でしょうか。とても楽しい演奏がありました。


ラグタイム・ダンス  ベシーナ  中野振一郎(cembalo)

 

18世紀フランスのチェンバロを中野さんが演奏。これも貴重。


【中野振一郎氏演奏】18世紀フランスのチェンバロ / Blanchet Harpsichord