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2017/07/18 オーケストラ・アンサンブル金沢 定期公演

2017/07/18 オーケストラ・アンサンブル金沢 定期公演

「パイプオルガンとオーケストラの饗宴」と銘打った
地元の楽団、オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の定期公演。

地元周辺で開催される、クラシックやジャズを中心としたコンサートを
ちょくちょく観て楽しむことがここ1年あまりですっかり習慣になってきて、
いまやCDなどの音源を購入するよりも多くのお小遣い額を投資している様相に
なっているくらいですが、思い起こしてみたらば、OEKの定期公演を観たのは
過去に1回か2回あったかどうか?くらいでした。

いちばんのネックはやはりコスト...
当然の話ですが、大規模な公演のいい席はやはり結構なお値段がするものです。
ごくごくたまに気合いを込めて、高価で大規模なコンサートへ行くよりは、
比較的安価で中規模・小規模なコンサートを数多くカジュアルに観て楽しむほうが
今の自分の、音楽を聴く(あるいは発掘する)スタイルに合っているのでしょう。

また、ジャンルの枠を超えた斬新なアイデアや響きに出会える確率も
そんな小さな規模のステージのほうが高いように思えて、そちらのほうへ
よりおもしろみを見い出しやすくなっているということも多分にあります。

そんな傾向があるこの頃ですが、ここは敢えて定期公演をチョイスしました。

パイプオルガンが主役の公演ではありますが、ワタクシとしては、
「やっと、やっと、シューベルトの未完成を生演奏で聴ける!」
とにもかくにもそこが食いつきどころでした。
行動スケジュールはやや厳しいところでしたが、少年時代からの長年の念願。
これを逃したらいつになるのかわからないとばかり、チケットを確保しました。

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クラシックを聴き始めた小学5年生あたりの時期、交響曲のレコードとして

 ベートーヴェンの「運命」と
 シューベルトの「未完成」とのカップリング

というのをよく見かけた記憶がありましたが(今でも多いのかな?)、
ひとまず有名な曲をとなると、このあたりを自然と手にして聴くわけです。

そして小学生の頃愛読していた、野球漫画の超大御所「水島新司さん」の
某有名漫画に登場する、某有名主人公のチームメートである小柄な選手が
繰り出す「秘打」という奇妙奇天烈でトリッキーなバッティングの中に、
「未完成」という名前の打法が登場してまして...

 『秘打!未完成交響曲』 .......なんやのそれは!

そんな曲があるのか...未完成な曲とはいったい何なのよ?そんなんあるん?と
頭から離れなくなったということも、まああったわけですよ!

両方を通して聴きまして、「運命」の迫力や力強さもとてもよかったのですが、
むしろ「未完成」が醸し出すほの暗い儚さのほうに強く惹かれてしまいました。
ただ暗くもない、ただ悲しくもない。曲が終わった後はやけに晴れ渡る気分。
その感覚は、当時はなににも例えることができませんでした。

はじめて聴いた当時から、そして今でも、約30分あまりの全編を通して聴いて、
一瞬たりとも退屈することがない、数少ない曲のひとつでもあります。
「未完成」の曲が醸し出す響きは、今では「達観した感覚の象徴」のように
自分には感じられます。

自分にとってはそんな特別な存在感の曲を、生のオーケストラでフルで聴く。
ひたすらそこを楽しみに、石川県立音楽堂コンサートホールへ向かいました。
今回は2階席の側面、壁沿いのバルコニー席にはじめて座ってみました。
たまにはそういう場所で聴いてみるのもおもしろいと(それとコストの都合とで...)

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まずは、OEKの音楽監督である、指揮者の井上道義さんがステージ前方に、
フランスのオルガン奏者であり作曲家でもあるティエリー・エスケシュさんが
ステージ上方にバルコニー状に設えてあるパイプオルガンの演奏台に登場。

井上さんが軽妙なごあいさつと前説のあと、おもむろにピアニカを取り出して
シューベルトの未完成のフレーズを崩した」お題をちょっと吹く。
エスケシュさんがその「与えられたテーマ」を元に、オルガンで即興演奏を
始めました。これはおもしろかったですね!
趣向自体もおもしろいですが、エスケシュさんがオルガンで鳴らした響きも
現代的なSFの場面を思い起こさせるようなスリル感があって、短いながらも
目まぐるしい強弱の切り替わりがおもしろみを感じさせたひとときでした。 

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オルガンの即興演奏が終わったあとは、楽団員が登場して所定の位置へ。
シューベルトの「未完成」が始まります。
よく見ると...通常のオーケストラとは違う配置。
ヴィオラ・チェロ・コントラバスの弦楽器中低音パートが後方中央に。
通常その場所にいるはずの管楽器と打楽器の一団は前方右側に。
金管楽器がいちばん手前に、そのやや奥に木管楽器

そのせいでしょうか。
中低域がとても豊かに、クリアに聴こえてくるように感じました。
チェロやコントラバスの響きが正面からダイレクトに届くような感覚。
とても暖かくて深い「未完成」を聴くことができました。
とりわけ第2楽章では、ヴァイオリンパートや木管パートによる
儚い美しさがより際立ったようで、胸がいっぱいになりました。
欲を言えばもうちょっとだけゆったりとしたテンポで聴きたかったですが
それでも生演奏で聴けて感激です。

「未完成」が終わったあとは一旦全員が引き上げて、ステージ上の椅子を再配置。
オーケストラのメンバーが通常の配置に戻ります。
首席チェロ奏者のルドヴィート・カンタさんが後から出てきて一番前に。
サン・サーンスのチェロ協奏曲第1番。

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全然知らない曲かと思っていたら、相当昔に聴いたことがあった曲でした。
第1楽章から第3楽章まで切れ目なく通して演奏される、キレのいい曲。

つい先日、ご自身の還暦バースデーコンサートで
バッハの無伴奏チェロ組曲全曲演奏をしたばかりのカンタさんは
ここでもソロパートの演奏が冴え渡ります。
オーケストラの響きが強めに、ソロパートの音量が抑えめに聴こえたのは
ホール側面壁際のバルコニー席だからそのように響くのでしょうか。
この曲は中央の座席で味わってみたかった気がします。

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20分ほどの休憩のあと、この公演の本来の目玉。
冒頭で即興演奏を披露したオルガン奏者のエスケシュさんの作品、
オルガン協奏曲第3番の世界初演
エスケシュさんは今年のOEKの「コンポーザー・イン・レジデンス」を
務めているようです。委嘱を受けて新しい作品を作曲、初演していくという
クラシック音楽の新たな発展や可能性への挑戦に向かうための協力関係と、
簡単に言うとそういうことだと思っていいでしょう。

オーケストラの規模はこれまでの曲よりも大きくなり、打楽器の種類が
やたらと増えています。パイプオルガンとの協奏曲ということで、
どれだけスケールの大きな壮大な音楽が聴けるのだろうかと...。

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始まってみたら、なんと言うのか...自分にはまったく馴染みのない響き。
そして、これまでに聴いてきてイメージしている「協奏曲」とは
まるで異質に思える展開が目白押し。
オルガンはソロパートでメロディを独奏するというよりも、
完全にオーケストラのパートの一部であるかのように、オーケストラ全体の
響きに後ろの方から彩りを添えるようなというか、背景の間を埋めていくかの
ような、そんな効果を与える役目に専念されているように感じられました。

そして曲そのものは、聴いたことのないような響きが次から次へと。
時折おもしろい響きや展開を感じる部分もあるにはありましたけども、
自分の耳では、一度聴いただけでは全体的な良さを感じるところまでは
消化しきれませんでした。ピンときてない。

これが、全く新しい音楽世界の可能性を切り拓いていく感覚なのでしょうか...
長い歴史のある、名作曲家や名曲と呼ばれる音楽がどれだけ蓄積されてきて
きたかと思われるような、ややもすると過去の遺産を再現しているだけの
退屈な世界とも思われかねないようなクラシック音楽やオーケストラ。
それでもなおこれからも、全く新しく斬新な響きを生み出し響き渡らせる
可能性、先鋭性がまだまだある。そういうおもしろみは感じました。

井上さんの楽しそうな指揮ぶり(昔のアイドルのように左右にステップを
踏みながら振ってたところもあった!)、曲が終わった後の爽快な表情。
新たな挑戦のひとつの成功なのでしょう。
そんな場を目にできたことは、自分にはなかなかない貴重な体験だったと
言えます。あまりにも新しい感覚過ぎてとても疲れましたけども...。

いやしかし...クラシックの音楽家・演奏家のポテンシャルってすごいですね。
あらためて思い知りました。古い曲の演奏も当たり前のようにこなした上で、
これほど新しい可能性へも踏み込んでいく姿勢には恐れ入るというしかない。

昨年観たOEKメンバーの刺激的な演奏会のことも思い出しました。
こういう新しい感覚へ触れていく体験もとても大事ですね。
リスナーとしての感覚を広げ続けていきたいものです。
その先は進めど進めど、ずっと「未完成」であるのでしょう.....それも悪くない!

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