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2017/07/16 The Trio 林英哲×山下洋輔×坂田明コンサート

2017/07/16 The Trio 林英哲×山下洋輔×坂田明コンサート

和太鼓の第一人者で世界初の和太鼓ソロ奏者・林英哲さん
フリージャズの最前線を走り続ける世界的ピアニスト・山下洋輔さん
様々な音楽ジャンルを縦横無尽に横断するサックスプレーヤー・坂田明さん
この唯一無二の、不世出の、圧倒的な力量を誇る音楽家3人が
一堂に会するコンサートを、石川県白山市(旧鶴来町)で観てきました。

石川県白山市で毎年この時期に開催される
「白山国際太鼓エクスタジア 2017」という和太鼓の一大イベント。
このイベントの「夜の部」としてこのコンサートが企画されていました。

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ゴールデンウィーク直前あたりの時期、風と緑の楽都音楽祭で
どの公演をハシゴしようかと思案しているところへこのことを知って...

 「これはもう絶対に物凄いステージになる。
  この3人が組んでおもしろくならないわけがない。絶対に行く!」

チケットが発売されるやいなや即刻購入しました。

というか...チラシに山下洋輔さんの姿があったなら
もはや条件反射的に「行く!」と予定を埋めてしまう勢いのワタクシ。
ましてや坂田さんが絡むとなったらそれこそ否応なく絶対のレベルに
なるというものです。

山下洋輔さんを観るのはこれで7回目。
昨年6月のソロコンサートのときには「7回目も来て欲しい!絶対に観る!」と
山下さんご本人を前にして直接伝えましたが、その7回目を数えました。

rcs4naruki.hatenablog.com

ちなみに坂田明さんの演奏を観るのはこれで3回目、
林英哲さんの演奏を観るのは2回目になります。
林英哲さんの演奏にはじめて触れたのはもう十数年前。
石川県立音楽堂で開催された、山下洋輔さんとのコンビによるステージでした。
今回のチラシを見てそのときの光景がかなり鮮明に思い起こされたことも
楽しみに拍車を掛けたというものです。

会場である「白山市鶴来総合文化会館・クレイン」へはじめて行きました。
和太鼓の生産拠点としても高名で、和太鼓の演奏活動の裾野や文化の面でも
非常に盛んな白山市だけあって、とても力の入った一大イベント。
有名スターのコンサートかスポーツイベントかと見まごうような
大きなおおきなディスプレイ。

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建物の中はとてもキレイでゆったりとしたロビーのスペース。
そしてホール。かたわらに喫茶店と図書館が併設されています。
この地域の文化発信拠点になっているようです。

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ステージ上には和太鼓とグランドピアノ。
グランドピアノが小さく見えるほどの和太鼓のセット。
ピアノには4本ほどのマイクが突っ込まれています。
これだけ見ても凄みをジワジワ感じさせて高揚してきます。

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まずは林英哲さんと坂田明さんの2人が登場して、
1曲目の「おおかみ出たぞというた」。

坂田さんの出身地・広島県(英哲さんも広島県出身だそうです)の
古来の民俗歌謡?の一節をテーマにした、いかにも坂田さんならではの
目のつけどころが感じられる、凄まじく激しいフリージャズ。
坂田さんのサックスが初っ端から断末魔のケイレン。
次々に繰り出す変態フレーズに、英哲さんが重く激しく目まぐるしいリズムを
秩序を保つか逸脱するかギリギリを行き来しつつ、
大小の和太鼓を組み合わせてドラムセットのように配置した和太鼓を乱れ打ち。
時にはサックスよりもメロディアスな音の連続を奏でているのを感じる。

英哲さんの身体の周りを征き交うばちの軌跡がとても美しくて驚き。
そして腕を大きくいっぱいに振り回しても身体の軸が絶対にブレない。
もはやアスリート。

2曲目。英哲さんの曲「三つ舞」。英哲さんと山下さんの2人による演奏。
英哲さんによる、音の響きは重く激しい、リズム自体は軽妙軽快な、
独特の味のある和太鼓ソロから始まり、延々と続くかと思ったところで
山下さんのピアノがリズムに合わせてフェードイン。
曲が進むにつれて両者が刻み込む音の激しさはどんどん増して行って
息詰まるような緊迫感。重くて鋭い轟音の嵐。
和太鼓の凄み、時にはその重く深い轟音を切り裂いて食ってかかるような
ピアノの大音響。超高速往復連打。鍵盤の肘打ち腕打ち十数連発!
これが山下さん。シビれました。
曲が終わった直後の爽快感といったらありませんでした。

そして3曲目。坂田さんが再度登場して3人が揃ったところで
待ちに待った、もはや伝説と化している初期の山下洋輔トリオを代表する
超名曲「キアズマ」!
奇妙奇天烈な独特のインパクトあるテーマのフレーズを3人がユニゾン
その直後に突入する途轍もないカオス!このスリルがたまらない!

五尺玉の特大打ち上げ花火を、中国の爆竹が炸裂するくらいのスピードで
それこそ爆竹を連発させるあの量をぶっ放し続けるかのような超絶爆発力。
それを見て呆気にとられているその足元へ大量のねずみ花火がにじり蠢いて
スパークしながら不穏な煙幕を張り巡らすような大混乱。
そんな超高速の迷宮を一瞬でスパッと消し去るような沈黙の間。
その瞬間またテーマが割り込んでまたもや間髪入れずに大爆発。

日本のド迫力の打ち上げ花火
イタリアのド派手な花火スペクタクル
中国の祝祭の爆竹
全部1箇所に大量に掻き集めて同時に点火して大炸裂させたかのような、
そんなパワーが最初から最後までまったく淀みなく止まらぬ大放出。

この曲はCDでも何度も聴いているし、ライブでも数回聴いた。
そのたびに体感する新たな音の格闘。容赦ない場外乱闘の殴り合い。
毎回毎回、エキサイトの度合いを軽々と超え続けて驚かされてきましたが
やはり今回もそう。またしても想像の遥か上を行く破天荒なスリル。
いったいどれだけ度肝を抜き続けられるのでしょうか。
恐ろしく爽快...やめられない...。

この3曲でおよそ45分。
英哲さんの和太鼓は全曲終始ドラムソロ並みの手数とスピード。ただただ驚愕。

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30分近い休憩を挟んで第2部へ。

英哲さんと山下さんの2人による、これも山下さんの名曲「アクプントゥーラ」。
アクプントゥーラとは「鍼灸」。それも「魔術的な効き目の鍼」というような
意味合いの言葉だそうです。
英哲さんの腰痛を完治させた素晴らしい腕の鍼灸の先生を讃えたこの言葉の
「響き」を元に山下さんが作曲したという作品。

英哲さんが和太鼓で「アクプントゥーラ!」という響きを叩き出してテーマへ。
9拍子で始まって拍子の変化を繰り返す、幾何学的なような民族音楽のような
味のあるテーマが面白い曲。
十数年前のステージのオープニングがこの曲でした。
そのときよりもタイトに締まった、聴きやすい演奏。
2人とも整った演奏とユニークなリズムをじっくりと聴かせてくれました。
英哲さんがとても気持ちよさそうな笑顔を湛えながら、心底楽しそうに
和太鼓のセットを打ち込んでいたのが一際印象的でした。

坂田さんが加わって、3人で「幻灯辻馬車」。
映画監督の岡本喜八さんの遺作となった未完作品に山下さんがつけた曲。
明治時代のガス灯が灯る光景のイメージという山下さんのコメントのとおり、
ここは非常に静かで詩的でノスタルジックな響きに浸るひととき。
それでも時折闇を鋭く切り裂くようなスウィング感が乱入したりして
やはりスリリングな展開に。何が起こるか最後までわからない。
英哲さんはここではささらのようなばちを用いて、山奥から響く祈りの
鼓動を思わせるような、重く地響きのようなリズムを紡ぎ出していました。
とても深くて感動的な響き。

最後は英哲さんの作品「大団円」。
英哲さんがステージ中央の大太鼓に相対して、あらゆる種類のばちを持ち替えて
素手のゲンコツと手のひら打ちも駆使して、大きく豪快に、ときには繊細に、
大きなおおきな太鼓の面を打ち込む。
一際ホールいっぱいに大きく轟き渡る大太鼓の響きに圧倒されるばかり。

そこへサックスとピアノがフェードイン。
和太鼓の重く低く複雑なリズムにピアノとサックスが縦横無尽に絡む。
おそらくすべて即興だったのではないでしょうか。ひとりひとりが好き勝手
バラバラに楽器を鳴らしているようで、それらが渾然一体となってなぜか整い、
不調和無秩序スレスレの調和と秩序を保っている。

そのままどんどんヒートアップ、スピードアップ。
天井知らずに昇り続ける圧倒的な熱量を帯びたパワー。
現世とも宇宙空間とも空想の世界ともつかぬ得体の知れない未知のどこかへ
力づくで猛スピードで引っ張って行かれるようなトリップ感。

本編はここまで。
アンコールは英哲さんの「太鼓叩く子」(だと思います)。
横置きされたやや小振りな和太鼓のソロのあと、英哲さんがそのまま
静かなリズムを刻みながらマイクを通さないで歌う。
そこへピアノとサックスも静かに優しく寄り添う。
祈り続けてそのまま眠りに落ちるかのように終わりました。

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これが小柄な体躯の60代・70代の音楽家の音か???
そんな3人の超人・怪人が延々繰り出す無尽蔵のパワーと瞬発力と反射神経。
もはやこの世のものとは思えないバケモノ。

特大ダンプがレッドゾーンを振り切ったまま暴走しているようなというか、
ハイパワーのSLが新幹線のスピードで爆走するようなというか、
そんなふうに大袈裟に例えてもまだ足りない感じがするほどの、
予想を遥かに超えた、あまりにも圧倒的で問答無用なパフォーマンスに
ただただ大感動。大感激。

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こういう感じで演奏のパフォーマンスはもう圧倒的なのでしたが、
曲の間のトークはとても力の抜けたほっこりとした笑いが漏れます。
素朴で朗らかな英哲さん、飄々と軽妙洒脱な紳士の山下さん、
人を食ったようなすっとぼけた雰囲気の怪しいおじさん、坂田さん。
このトークもまた楽しみで、ステージに駆けつけるのが止められないと
いうところも大きいのです。

終演後の、お三方あるいはどなたかのロビーへの登場はなかったので
感動をお伝えすることは叶わずにちょっと寂しくはありましたが、
そんな気持ちを掻き消して余りある高揚感の余韻を味わいながら
ホールをあとに。
クルマに乗り込んで走り出すやいなや強く降りだした雨の中の帰路へ。

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楽器の響き。それらの絡み。うねりまくる轟音の大洪水を繰り出す
演奏者の姿。ほんとうに楽しいです。おもしろいです。
この3人でなかったら絶対に体感できない、一期一会、一触即発のステージ。
最高でした。
これだから音楽を聴き続けるのを止められない。

 

山下さん作曲の「キアズマ」。
ここで乱れ打つドラムの音の洪水を和太鼓に置き換えた感じなのですよ...


山下洋輔トリオ