2017/05/20 石川征樹・AKIライブ@メロメロポッチ
相当以前に観たライブになりますが…5月後半から6月初頭にかけて
アコースティックギターの演奏をたて続けに3つ観ました。
(事前にテーマとして計画していたわけではなく、たまたまそうなった)
ということで、ギター演奏のライブレポ3連発。いきます。やっと...
富山県出身で、現在は金沢市内を拠点に作曲・演奏活動をされている
ギタリスト・石川征樹さんと、独自のスタイルで海外や国内で長らく
演奏活動を続けて来られたという凄腕ギタリスト・AKIさんとの共演。
石川征樹さんの演奏には、これより少し前にはじめて触れました。
金沢の犀川に架かる桜橋に近い、古くからの狭い路地が通る住宅地で
ひっそりと営業されているカフェ「ノマドライフさん」が、
初めての生演奏ライブイベントを企画したときに出演されていたのを
観たことがきっかけでした。
このときの、自由で非常に優しい独自の音楽スタイルが印象的で、
AKIさんと2人でライブをすることもここでの告知で知ったのでした。
非常にテクニカルなスタイルの持ち主というAKIさんとの共演。
どのようなことになるのだろう、と面白みを感じて、
後日、予定の調整がついたところで、石川さんへ直接予約の連絡を入れて、
当日観に行きました。
開催場所は、金沢・近江町市場の隅にある「メロメロポッチ」。
地下にある飲み屋でもあり喫茶でもあり...のような、まだとらえどころが
つかめておりませんが、まあディープそうなお店ではある、と。(汗)
入口付近にありました。手書きのイベント告知板。
なんにも知らずにこれだけ見たら生演奏のライブとはすぐに連想し難い...
2人の男が夜な夜ななにをやろうというのだよ...と訝しく思うかも...
まあワタクシはギターの共演とはじめからわかっていましたので
はじめての来店でしたけども平然と入っていきました。
暗い店内で受け付けとワンドリンクのオーダー。
ドリンクの選択肢が独自。コーヒーやジンジャーエールなどの定番もあるけど
オリジナルジュースのメニューが多くあり、そちらも選べるということでした。
キャラポーレという、りんご・にんじん・レモンのミックスジュースを
飲んでみました。爽やかでまろやかな口当たりで美味しかったです。
開演前、石川征樹さんがカウンターに居られましたので、ごあいさつを。
開演時刻を10分ほど過ぎたあたりで石川さんがギターを手にステージへ。
ガット弦が張られたアコースティックギターを構えて演奏を始めました。
すべてオリジナルの曲を4曲。
CD作品へ収められている完成された曲や、未完成だけど、という曲まで。
ご自身の歌声も交えながら、旅をしているときの風景の移り変わりを
連想されるような音楽が奏でられていきました。
海岸に降り立って始める異国の旅~木の葉が風にそよぐ草原~
古いレンガ造りの街並み~また草原~街並みの雑踏...
建物の中から見える、窓にあたる雨粒・軒下から垂れおちる雨粒...
そういう風景が広がるような、絵画的な柔らかい音風景という印象。
クラシカルな素朴な響きへ時折絡む激しい変拍子の複雑なフレーズ。
既定のジャンルに収まりきらない石川さん独自の持ち味を楽しみました。
はじめて石川さんのライブを観たときにも、未完成という曲をいくつも
織り交ぜられていましたが、おそらく、このように観客を前にして
演奏している瞬間に感じ取った雰囲気をも曲のインスピレーションにして
即興と練り上げを積み重ねて自作曲を創り上げていくというスタイルを
とっているのかもしれません。
次に生演奏を聴く機会があったら、このあたりを伺ってみたいものです。
しばらくの休憩を挟んで後半へ。次はAKIさんが登場。
AKIさんが最も影響を受けて、かつ音楽性を認められたというギタリスト、
ピーター・フィンガー氏が作製したという(基本的に他人のためには
ギターを作らないのだとか)、金属弦が張られたオリジナルギターでの
演奏が始まりました。
オリジナル曲を中心に、ビートルズの「A Day In The Life」や
童謡「こいのぼり」という有名曲のアレンジも織り交ぜて10曲近く。
ひとつひとつの音がくっきりはっきり鳴らされていてとてもクリア。
鋭くて淀みがない。
非常にテクニカルでスリリングな曲と、穏やかで叙情的な曲まで。
夜空の星の光、街に広がる照明群の夜景。
そういう、いろいろな「暗がりから射す光の眩しさ」を連想しました。
石川さんが明るい昼下がりに揺らぐ陰で、AKIさんは夜の暗がりに射す鋭い光。
対象的な響きに感じられたのが非常に印象的でした。
それぞれのソロステージの後、2度目の休憩を挟んで
2人が登場してデュオ演奏のステージへ。10分ほどのインプロヴィゼーション。
複雑で緻密な音の粒のつづれ織り。大きな細密画を観ているかのような感覚。
昼下がりのそよかぜが吹く自然と街並みを気ままに歩くような石川さんの音。
夜空に輝く星々のような、眩しくつややかな響きを湛えたAKIさんの音。
ここでも2人の全く異なった個性がそれぞれ際立っていました。
そして、2人とも、ロックに大きな影響を受けてきたことをひしひしと
感じさせる、そういう演奏家ならではのアタックやフレーズが感じられて
興味深かったですね。
特定の音楽ジャンルの定番では絶対に味わえない響き、スタイル。
非常に濃密だった、2時間あまりのアコースティックギターの世界。
実はこの日は早朝野球1試合の後、県内かほく市の西田幾多郎記念哲学館へ
はじめて出向いて講義に参加し、その足で富山県小矢部市の美術展で
抽象絵画を観たあとにこのライブを聴きに来た......
そういうことでかなり疲れてしまいましたが、いろいろな感覚を揺さぶる
体験を一気に凝縮した、自由で濃密ないちにちの最後を、それこそ自由で
濃密なギター演奏で締めることができたわけで、
思い切り動きまくってよかったなあと充実感に満ち満ちた一日になりました。
同じ日の昼、哲学館へはじめて出向いたときの話。
その後、抽象絵画を観たときの話。
おふたりの演奏スタイルがとてもよくわかる動画がそれぞれありました。
石川征樹さん。詩的な風景のような音世界。
AKIさん。非常に鋭くテクニカルなパフォーマンス。
AKI - "TRUST" - Live @ songlines (Sep 8th, 2016)
さらに...AKIさんとピーター・フィンガー氏のデュオ。
これもまたスリリングで凄い!
Peter Finger & AKI (Pleasant Session)