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2017/07/09 ルドヴィート・カンタ バースディ・リサイタル

2017/07/09 ルドヴィート・カンタ バースディ・リサイタル

オーケストラ・アンサンブル金沢の首席チェロ奏者
ルドヴィート・カンタさんによる、ご自身の還暦記念コンサート。

カンタさんの演奏にはじめて触れたのは、昨年10月。
金沢で活動する中国・内モンゴル出身の二胡奏者「李彩霞さん」の
来日20周年記念コンサートでした。
このコンサートで共演者としてチェロを弾いていたのがカンタさんで、
二胡の響きに調和するまろやかな音色がとても印象に残っていました。

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そのカンタさんがなんと、バッハの無伴奏チェロ組曲を全曲演奏される。
バッハの魅力に取り憑かれる大きなきっかけになった曲集のひとつでもあって
療養中だったときもその後も、静かに気持ちを落ち着かせたいときによく聴く、
そして聴くと必ずよく効く...いや落ち着く、おおきくやさしくたのしい曲集。

そんな大好きな曲集が一気に全部ナマで聴くことができる。
これは行かずにいくまい!即刻チケットを購入しました。

今年1月のカンタさんのチェロ・リサイタルには、チケットを購入したものの
前日になって都合で行けなくなってしまったので、今度こそ!な思いも強く...

左が今回のリサイタル。右が今年1月に断念したリサイタル...

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当日午後、石川県立音楽堂コンサートホールのロビーへ。
全席自由。2階席と3階席は対象外。
開場待ちの列に並んだ付近には、大好きな地元のハーピスト
「上田智子さん」の後援会から送られた祝福の献花に目がとまりました。

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ホールに入り、最前列に陣取りました。
できるだけ音も演奏姿も間近で楽しみたいですからね。

開演直前の案内アナウンス。
例によって「携帯電話やスマートフォンは電源をお切りください」
「公演中の撮影不可」「演奏中の会場の出入りはご遠慮を」等々の注意事項。
「心地好い演奏を聴いてお休みになる際はいびきにご注意ください」って!
観客席から笑いが漏れます。

うーん。これは自分で居眠りのいびきに気をつけるというよりも
近くのいびき発生源に注意を促すように小突けということか???
などとしょーもないことを考えたり...そんなことはどうでもいいですね(汗)

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開演時刻になりました。カンタさんが登場して演奏をはじめます。

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ひとつひとつの音の強弱がくっきり。やや速めのテンポで力強く、
それでいてとても滑らかでまろやかな響きとフレージング。
組曲の中の曲間も短く。楽譜をめくったり弓を持ち直したりする以外は
ほとんど切れ目なく次へ次へと進んでいきます。

演奏者のキャラクターの自己主張は強すぎず。
かと言って淡白にあっさり無難に流れるだけでは決してなく、
曲の構造や音の組み合わせのおもしろさを前面に出したような印象。
速いパッセージも強い音もすべて素朴な美しさを湛えた演奏。
鳴らすのがとても大変そうな重音も濁らずにとても美しく響いていました。

音楽堂の広いホールにチェロ1本の響き。
楽器から発する音。ホールの残響。シンプルなライティング。
余計な力や無駄な動きが全くないように見えるカンタさんの動き。
すべてがひとつの芸術作品を観ているような感覚。

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軽妙で親しみやすい第1番
シリアスで厳かな第2番

10分の休憩

第1番と第2番の特徴を合わせて発展させたような印象の第3番
表情豊かでバラエティに富んだ楽しい第4番

30分の休憩

厳粛でストイックな雰囲気に包まれる第5番
自由に解き放たれるような開放感とユーモア溢れる第6番

アンコールなしの3時間15分。

第1番からはじまって第6番まで。
すべてが終わった瞬間、客席の後ろからほとんど怒号かというくらいの
「ブラボー!」大喝采の掛け声と大拍手。
わたくしも第6番の最後の音が消えた瞬間の高揚感がすごかったです。
バッハの組曲の壮大さ。カンタさんの生演奏のテンション。高まりました。

客席から自然に「Happy Birthday To You」の大合唱。Dear Kanta !!
カンタさんの娘さんが祝福の花束を。
演奏中の緊張感は完全に解き放たれて和やかな空気が流れます。

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演奏の難易度は第1番が最も易しく、第2番、第3番...と進むにつれて
だんだんと上がっていくそうですが、とりわけ最後の第6番。
もともとは5弦のチェロで弾くことを前提に作曲された、
高音部のフレーズがとても多くて曲調のバラエティも豊かな第6番は
カンタさんの手がチェロの指板を駆け巡る動きの忙しさ複雑さが
非常に際立って見えました。見るからに他よりもものすごく難しそうです。
聴いてる方はとてもおもしろいのですけどもね...

チェロ1本だけ。伴奏楽器まったくなしで、主旋律と副旋律、リズム。
すべてが鳴らされて際立つように作曲された、非常に挑戦的な曲集。
それが6曲。ひとつの組曲のなかには6曲。都合36曲。
バッハならではの凄さ。それを弾ききる演奏家の凄さ。
堪能しました。生演奏で全部体感したらそりゃあ高まるってもんです。

 

30分間の長めの休憩時間には、ホールのロビーでワインが振る舞われました。
禁酒継続中のわたくしは飲むのはガマンして、ワインを楽しみ人たちの光景を
味わいました。

カンタさんの写真のかずかずもボードに掲げられていました。
とりわけ印象的だったのが…

  • 立山の山頂、3000m超えの場所にある神社での奉納演奏風景。
    その前に、チェロのケースを背負って山頂へ登っていく光景。
  • スタジオでレコーディングの演奏をしている光景。
    エアコンの作動音などを絶対に拾うわけにはいかないため、
    空調なしの蒸し暑い密室で上半身裸に半ズボン一丁の格好で
    チェロを演奏するカンタさんの姿。裸の大将がチェロを...ゲフンゲフン!
  • 巨匠ロストロボーヴィッチとの交流シーン。

お祝いメッセージカードを貼るためのボードも備えられていました。
あとでカンタさんへ渡されるとのことで、わたくしもひとつ書きました。

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大好きなバッハの、大好きな曲集の全曲。
それを地元で活動する素晴らしい腕の演奏家による生演奏で楽しめた。
しかも演奏家ご自身の大きな節目に弾く機会に立ち会えた。
充実感も喜びもひとしおでした。


カンタさん演奏動画.1