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2017/01/29 チェンバロ講座 第2回

※旧ブログ記事を加筆訂正しました。

2017/01/29 チェンバロ講座 第2回

30歳になったあたりからバロック音楽、特にバッハの音楽に傾倒しました。
そのときに、殊にチェンバロという楽器の響きを身近に感じるようになりました。

世界的なチェンバロ奏者といえば、グスタフ・レオンハルトさん、アンドレアス・シュタイアーさん、セリーヌ・フリッシュさんといった演奏家の音楽に触れて、チェンバロの魅力~その繊細さ、深さに取り憑かれたようになってしまっていました。
その他、著名で実力も素晴らしいチェンバロ奏者としては、トレヴァー・ピノックさん、日本人では曽根麻矢子さんが有名で、それぞれ好きな演奏家としてあげられます。

昨年の夏、金沢市チェンバロ講座という企画が始まったのを知って、その音色をナマで身近に感じたい、楽器のことをもっと知りたい、そういう好奇心の赴くままに初回のチケットを購入して参加したことがありました。
そのときのことは先頃に当ブログにも残しています。

rcs4naruki.hatenablog.com

そしてその第2回。
演奏法のことを中心に知ることができるらしい…
しかも今回の講師は中野振一郎さん。
盤は持っていませんが著名なチェンバロ奏者であることは知っていました。
これは今回も行かねばならぬでしょうと。即刻チケットを購入して行って参りました。

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今回の場所は、金沢は香林坊北國新聞赤羽ホール。
北國新聞ビルのそばにある新しいホールです。
コンサートホールは2階にありますが、1階の「交流ホール」が使われました。
おそらくこの講座のために設えられたであろう小上がり状の舞台にチェンバロが1台。その周りに椅子が100脚近く並べられていました。
演奏している手元が見られる場所へ陣取ることは残念ながらできませんでしたが、それでもほぼ中央の最前列に席を確保できました。

開演直前まで、チェンバロのオーナーさんが調律をしていました。

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前回の講座はたっぷり3時間半の長丁場。
今回もそのくらいの時間を想定していましたが、終わってみれば1時間半ちょっと。

中身はきちんとコンパクトにまとまった、のんびりのほほんとした関西訛りでとても親しみやすい語り口の解説。それでいて笑いもちょいちょい挟んできたり。
その合間に軽妙に変幻自在に繰り出される演奏の実例。そして、とても丁寧に、曲の特徴をわかりやすく際立たせた、バリエーション豊かなコンサート曲目の演奏。
チェンバロに、クラシック音楽に、音楽そのものにそれほど縁のない人にこそ体験してほしかったなあと感じたひとときでした。
きっと中野さんもきっとそういうことを願っていることでしょう。
真摯かつ誠実な姿勢と人間性が窺えました。

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解説されていたのは、ピアノとの違いというよりも、チェンバロの特色そのものだったかと。おそらく聴衆のほとんどがピアノ経験者であろうことからそのような語りになったのでしょう。解説されていた内容を列挙していきます。

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 チェンバロの特色
  同じ鍵盤楽器で似た形をしてはいるがピアノとは全然別モノ。
  よく「ピアノのルーツ」と言われるがそうではない。
  ピアノは打弦楽器。チェンバロ撥弦楽器。爪で弦を引っ掻く。いわば「西洋の琴」。

  2段の鍵盤を持つものがほとんど。
  上段と下段とでは音色が違い、同時に弾くときは下段で旋律を弾く。
  両方を独立して鳴らすことはもちろん、片側を弾いたらもう片側も自動的に連動させて
  同時に鳴らすこともできる。

  2段鍵盤でしか弾けない曲がある。J.S.バッハの「ゴルトベルク変奏曲」など。
  上段と下段とで同じ音域・位置のキーを同時に弾くようなところが曲の中にある。
  1段だけでは得られない独特の厚みのある響きが得られる。

  本体の内部にはピアノのように鍵盤1つに対応する弦が張られている。
  通常の弦は「8フィート弦」と呼ばれる。
  それに加えてさらに1オクターブ高い音を出す弦「4フィート弦」も仕込まれている。

  以上のような、音色の選択をするために楽器の中に仕込まれたもろもろの機構を
  「レジスター」と呼ぶ。
このメカニカルな仕掛けを駆使してでも、指のタッチひとつでも
  充分強弱や表情を盛り込むことが可能。

  「アーティキュレーション」でも曲に豊かな強弱や表情をつけていく。
  曲の中の然るべきところ、小説の区切りやリズムに、微妙に抑揚や意図的なズレを起こして
  アクセントを強調することをアーティキュレーション」と呼ぶ

  これはあらゆる楽器の演奏全般で意識されることであるが、チェンバロの演奏、
  殊にルネサンス期やバロック期の音楽では特に重要視される。

  チェンバロは強弱をつけられなくて表情に乏しい楽器と言われるがそんなことはない。

  ルネサンス期の演奏のときの指づかい
  音階を奏でるために使う指は、人差し指、中指、薬指の3本だけ。
  親指と小指は長さや太さが不揃いで安定した音を出せない…ということで使うことを敬遠された。
  指づかいには「イタリア・ドイツ流」「オランダ・イギリス流」の2派あったが後者が残った。

 

曲目の解説もありました。

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 「鳥たちのさえずり」
 鳥カゴの中にアホほど鳥が詰め込まれて「ここから出せ!出せ!」と
 バタバタ喚いているところを描写した曲。
 (中野さんが「アホほど鳥が詰め込まれて」って...笑)
 せわしない、不規則(に聴こえる)ひっかかりのあるメロディーとリズム。

 「スカルラッティソナタ
 8フィート弦と4フィート弦を駆使した、3/8拍子のひたすら明るくキラキラと跳ねるような曲。

 「のみ」
 大工道具ののみではなく、ぴょんぴょん跳ねる、まとわりつかれるとカユいほうの「蚤」を描写。
 ルネサンスの宮廷にはきっとたくさんいたことでしょう…と。

 残響を抑えたマットな音色。日本の琴や西洋のリュートに近い。琵琶に近いのかも。

 「第6オルドル」
 フランス音楽。装飾音が特色。「装飾音を取っ払ったらなんにも残らないくらい」とまで。
  - 刈り入れ
   曲調はガボット
   ガボットを踊りながら刈り入れはできません。宮廷内の想像の産物でしょうと…。
  - 優しい恋わずらい
   宮廷の姫たちの浮気心に満ちたガールズトーク
  - 神秘のバリケード
   当時のドレスの下につける、クジラの骨で作られたコルセットの登録商標のこと、
   ということがつい最近の研究で判明したとのこと。
  - おしゃべり
   そのまま。おしゃべりを描写。

 「17世紀の音楽」
  前述の古い指づかいで演奏される曲のかずかず。
  パルティータ
   もともとはダンス用の変奏曲という意味で用いられたのが本来の意味。
   転じてフリーフォームの組曲を指すようになった。組曲のルーツ。

 「太閤秀吉の愛したチェンバロ
  豊臣秀吉は非常に哀しい響きの音楽を愛したとのこと。
  「猿」のイメージでコミカルに思われがちな彼も
  実は人間味豊かな深みある人物だったのでしょう。 

 「フォルクレの曲」
  フォルクレという作曲家は相当な人格破綻者だったそうで、息子の嫁を奪うために
  息子に決闘を申し込んだ…など、
奇行のエピソードがたくさんとか。
  - ラモー
   前述の「鳥たちのさえずり」を作曲した「ラモー」のこと。
   ラモーもたいそう性格が悪い人物だったそうで、
   性格悪い人が性格悪い人を描写するとどうなるか?と…
   重苦しくて激しいフレーズの連続。
  - シルヴァ
   ロンド形式の曲。ロンドなのでワンテーマの繰り返し。
   人間も歳を取るとしゃべりがロンド形式になるとかなんとか(中野さんがそう仰って…)。
  - ジュピター(ゼウス)
   ひときわ複雑で重厚な曲調。

アンコールには、モーツァルトのケッヘル(モーツァルトの作品番号)1番。
5歳の頃にはじめて作曲した短い曲がさらっと演奏されました。


終演後、ホールを出る前に一旦トイレに行って、出たそのとき。
コートを着込んでスーツケースを転がしてきた中野さんにバッタリ。
「あ、どうもどうも」と…

この辺りの場所で、とても楽しく聴かせていただいたとのお礼を言いましたら
握手を求められましたので、応じさせていただきました。
一流の演奏家の分厚く暖かい手の感触、忘れません。良い思い出になりました。

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中野振一郎さんの溌剌としたチェンバロ演奏。


【中野振一郎氏演奏】18世紀フランスのチェンバロ / Blanchet Harpsichord

 

中野振一郎さんのチェンバロ講座。このような語り口で講座は進むのでした。


マスタークラスチェンバロ公開講座ダイジェスト中野振一郎先生1