Naruki.K's Radio Head

Transmitter! Picking up something good. Hey! Radio head! The sound...of a brand-new world♪

2016/10/27 Free Range Emsemble

※旧ブログ記事を加筆訂正しました。

2016/10/27 Free Range Emsemble

オーケストラ・アンサンブル金沢のメンバーのヴァイオリン奏者と、ゲストのピアニストによる演奏会。
大好きな曲、J.S.バッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第3番」が生演奏で聴ける!という、その一点で観ることを決めたというのがそもそもの動機でしたけども、それ以上の新しい刺激と興奮を得られた、単に「音楽に浸って心地よい音色に癒される」という感覚とは全く異質の、刺激に満ちたひとときでした。

f:id:rcs4naruki:20170322114527j:plain f:id:rcs4naruki:20170322115037j:plain

まずはお目当てのバッハを。
無伴奏という名の通り、全編ソロヴァイオリンで繰り出される濃密な空間。
ヴァイオリン1本だけで複数の声部を(それも3声も4声も)パラレルに再現するという、カノンやフーガといった対位法のゴッドファーザー、バッハならではの途方もない音楽実験。

 対位法:
 同じ構造を持つメロディ同士や異なるメロディ同士を複数の層に重ねて、
 あるいは幾分かずらして同時進行させてひとつの流れに調和させる作曲技法。

バッハという人はこれをヴァイオリンだけではなく、チェロでも、果てはフルート(!)でもやっている…。

ここでの演奏はまあ無難にといったところ。
普段CDで聴いている演奏が途轍もなさ過ぎるもので(しかも何種類も)、それに馴れ切ってしまっているせいか、やや薄味に聴こえてしまうのも致し方ないところですが…2箇所ほど音を抜かしてしまったことにも気がついたものの、そう気にはしないでおおよそ安心して聴くことができました。

300名収容の小規模ホールの最前列で、奏者との距離が約2メートル程度というかなりの砂かぶり位置で手元の動きをもよく見ることができたところがとても楽しかったです。
特にフーガで複数の声部を再現するときに、弦を押さえる左手の動きが単旋律を奏でているときとは明らかに違うそれだったのがとても印象的で、ギターでコードを押さえるのに近い動きをより細かい単位で微調整する、その連続体と言えばよいのか。
そういうところがまた興味深かったですね。

そして日本人作曲家の作品へ。
池辺晋一郎さんの作品を2つ。
トークではしょーもないダジャレを低音ヴォイスでカマしまくるすっとぼけたおっさんという風情の池辺さん。春のラ・フォル・ジュルネ金沢でのステージではその駄洒落トークと比較的親しみやすい響きの即興演奏をビアノで繰り出していた印象があって、そう小難しくない作品なんだろうとなんとなく予想していたところが…

f:id:rcs4naruki:20170322115032j:plain

音が鳴り出した途端。あまりのインパクトに耳がビビりました。
ばりっばりの現代音楽的な、普段耳にしている音とは全く異質の響き。

正直言ってどの辺りがメロディーなのか、どこからどこまでがテーマでどこからが展開部なのかさっぱりわからず、局の構成を全然掴むことができなかったのですのけども、2本のヴァイオリンの対話、鍔競り合い、丁々発止。呼吸の交換の応酬。
西洋の音階、音作り(と自分が感じているイメージ)を逸脱した、東洋の響き、さらには無国籍な、世界にかつてない響きを西洋の楽器で再現する挑戦というのか…音楽を奏でているというよりは、これは剣術の演舞を見ているような感覚に近いんじゃないかと。
最後の一音を擦って弓を一気に振り下ろした時の所作なんかは、演奏というよりもこれは演舞だと…。そんなふうに変にテンションが上がってしまって、途中からそういうモードに頭を切り替えて観てました。

そして…クラシックの演奏家の途轍もない精神性、普段の精進の次元の高さ、そういうものを演奏している姿からひしひしと感じられた気がしました。
有名曲や昔の曲を滑らかに演奏することは当たり前、その先にそれまでになかった新たな響きを如何にして自分のモノとして奏でられるのか、そういう領域に日々挑戦しているのだということが朧気ながらも見えた気がしました。
曲の内容を理解できたとはとても言えないながらも、そういう新たな感覚を体験できたという意味で興奮に満ちたひとときでした。

最後は、別宮(べっく)貞雄さんの作品。
こちらが事前に全くの知識も耳もなく予測不能、先入観すらない状態で聴きました。
意外とこちらの方がメロディーも構成も比較的わかりやすくて、若干力を抜いて聴けました。
ヴァイオリンとピアノ伴奏のオーソドックスな楽器構成だったということもあったかも知れません。全体的にはダークで重厚な感じの音楽でした。

バッハでのカッチリと構成された音楽。池辺さんでの既成の音楽を超えた独特の感覚、その中間点といったら良いのか、やはり現代音楽はこれまでにない可能性を切り拓く側面があるものなのだなあと。普段聴くには小難しすぎてしんどいけれども、こうやって生演奏で楽器と奏法の新たな可能性の誕生に立ち会うという興奮を得られるという意味ではとても有意義な瞬間で、音楽が好きでほんとうによかったとこういうときにも痛感したのでした。

f:id:rcs4naruki:20170322114540j:plain

 

バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番。
10分ほどの長大なフーガもとても素晴らしい曲ですが、特に終曲「アレグロ・アッサイ」が大好き。日本のバロック・ヴァイオリンの第一人者・寺神戸亮さんによると『連打される祝祭の鐘』。重く朴訥とした釣り鐘というよりは Tubeller Bells...チャイムの軽やかな乱れ打ち。
ヤッシャ・ハイフェッツさんの一音たりとも揺るがせにしない隙のない硬質な演奏。

現代のバロック・ヴァイオリンによる古楽演奏の草分け、シギスヴァルト・クイケンさんの2度目の録音で初めてこの曲を聴いたとき、この動画の演奏とは違ってもっとエコーが利いた録音だったせいか、とても一本のヴァイオリンで演奏されているとは信じられない思いをしたものでした。この音の絡みの連続と軽やかさは一体何だ、と。

ポピュラーなヴァイオリン小曲とは全く異質の、複雑な建築物を構築するかのようなこの感覚。この曲は実は意外と比較的単旋律の連続なのですが…それでも、楽譜の配置と流れの美しさ。そういうものを少しでも感じてもらえるととても嬉しいですね。


Jasha Heifetz Bach Sonata C major Allegro assai

 

バロック・ヴァイオリンによる素晴らしい演奏を発見。
イザベル・ファウストさん。スピーディーで鮮烈!


Isabelle Faust Allegro assai bwv 1005

 

クラシックギターの演奏による『祝祭の鐘』。
エネア・レオーネさんの演奏によるクリアな演奏。動画の美しさも特筆モノ。
演奏姿の美しさもさることながら、弦が弾かれたときの振動に注目。


Enea Leone plays for Gruppo Aturia Bach allegro BWV 1005